2011-01-01から1年間の記事一覧

そんな自分が嫌いじゃない

川崎の客先に常駐して働いていた時、激務からくるストレスで咳がとまらなくなったことがあった。ネクタイを締めると喉がつまるので、ゆるくノットを結んで、だらりとネクタイをぶら下げて、仕事をしていた。 帰りはいつも終電近くで、駅のコンビニで買ったサ…

音が溶けた世界で

家に引きこもり、昨日ヨドバシカメラで買った『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』をプレイした。64版よりアクションの操作性が良くなっている。ダッシュしながら壁に突っ込むと、勝手によじ登る。狭い隙間に近づくと、ヒョイとジャンプする。崖にぶらさが…

成熟した社会の退屈なワタシ

堂山町の回転寿司屋で寿司を食べ、茶屋町のカフェでコーヒーを飲んだ後、人が溢れる阪急梅田32番街を抜けて、 紀伊國屋書店梅田店に入った。 仕事術・整理術、自己啓発、古典、他ビジネス書を眺め、人文書の棚へ。内田樹、東浩紀、仲正昌樹の新刊を手に取り…

一滴

水道の 蛇口に溜まった 水滴が ワタシを映して シンクに落ちる カルピスの 瓶に溜まった 一適が 夏の終わりを 教えてくれる 味噌汁に 箸をひたして 上にあげ 落ちる水滴 それを見る祖父 目薬を さして眼を 見ひらいて 泣いてないよと 言い訳をした 仰向けに …

同僚が辞めた

同僚が辞めた。30代半ばの女性で、5年ほど前にうちの会社に入社した。昨年1月に会社を辞めてアメリカに語学留学して、1年ほどで日本に帰国した。上司の推薦があり、出戻りの形でうちの会社に再度入社したのが今年の5月。 昨年まで俺が参加していたプロジェク…

リカちゃんとワタシ(2)

サトコの家は裕福だった。 兄が一人いた。兄は国立大学の医学部を卒業して医者になった。 サトコは大学に行かなかった。高校を卒業した後、家を飛び出して、恋人のサトシと同棲を始めた。 『家は窮屈だし、退屈だった。ワタシの居場所は無いと思った』 リカ…

叙情は文語体で

金曜日、名古屋から大阪に戻り、梅田の紀伊国屋に寄った。キャリーバックを引っさげて、過疎化した詩・俳句・短歌の棚に向かうと、塚本邦雄『西行百首』(講談社文芸文庫)が平積みされていた。 西行百首 (講談社文芸文庫)作者: 塚本邦雄出版社/メーカー: 講談…

リカちゃんとワタシ

サトコとリカは手をつないで歩いた。 道はどこまでも平らで、どこまでも続いていた。 サトコは鞄の中からANNA SUIのリップグロスを取り出して、リカの頬っぺたに、忍者ハットリくんのような渦巻きを書いた。 『どう、アフリカの儀式』 サトコはケタケタと笑…

大体おそらく8割方はネガティブ

ツイッターで毎日つぶやいている。以前は短歌だけをつぶやいていたが、今は日常のよしなしごとを、思いついた先から、ぽんぽんと放り投げるようにつぶやいている。ホロワーと会話することはあまり無いので、本当に一人でつぶやいていることが多い。 思いつい…

佇む人

今朝、仕事場のプリンターが断末魔の悲鳴のような音を上げて、紙が詰まった。あっちゃこっちゃで紙が詰まるおんぼろプリンターだが、今朝のような音がしたのは始めてだ。思わず同僚と、 「え、マジ? 遂に死んだ?」 などと言っていたのだが、詰まっていた紙を…

ミックスフライ

メシを食べに行って、メニューに『ミックスフライ』と書かれていたら、ミックスフライを注文したくなる。 ミックスフライの中身は店によって様々だ。エビフライが入っていることは多い。白身魚のフライも同じく。カニクリームコロッケやホタテフライなど、素…

バーベキュー

バーベキューといえばサッポロポテトだ。スナックの一枚一枚が親指ほどの大きさで、網状になっていて、触感はやわらかい。"ばーべQ"と冠したフレーバーは、コイヤケのポテトチップスほど味の主張は強くないが、やみつきになる独特のコクがある。小さい頃、ス…

秘密主義

今の職場は、会議室一室をプロジェクトルームみたいに使っていて、長いテーブルに4人がノートパソコンを広げて仕事をしている。西側に上司&先輩が3人、東側には俺一人。皆向かい合わせで仕事をしているので、互いの顔は見れるが、パソコンの画面が何かは分か…

ひさしぶり日記

昨日は名古屋のオフィスでチームメンバーと打ち合わせ。畳10畳くらいの狭い部屋で、男5人がシステム要件定義書を広げて喧々諤々。 午後2時。しゃべりすぎて俺の顎ががくがくしだした所で、上司が大阪に移動しないといけないので本日の打ち合わせはお開きとな…

仕事漂流

ここ2週間ほど、忙しい日々が続いている。GW明けから、毎朝5:55に起きるようにしているので(それまでは6:20だった)、仕事と寝不足のダブルパンチが体にこたえてきた。座りっぱなしで血流が滞り、夕方頃に足の裏が燃えるように熱くなる。たまらなくなって革靴…

自分の芸術と向き合う

「御堂筋バスターズ」という題の小説を書いている。4000字ほどのEp.2を執筆するのに2週間近くかかった。エッセイならすらすらと筆がすすむが、物語は遅々として進まない。 エッセイは自分の感情や知識から形作られる世界観が文章を引っ張る。物語は、自分で…

ランナーズ・ハイ

昨日も休み。運動不足を解消するために、大阪城公園まで走ることにした。走るルートを確認するため、近所の本屋さんで地図を購入する。店番のおばちゃんに、若いのに地図を買うなんて珍しい、と言われた。Google Mapは便利だけれど、手にずっしりと重みを感…

御堂筋バスターズ Ep.2 寄生理論

二日酔いの体にコーヒーの苦味が染み渡る。体の疲れが透明な蛇になって俺の体の回りでトグロを巻いている。目の前には馬のマスクを被った女が一人。黒の丈の短いチュニックで、腰には幅のあるベルト、足元は膝上まであるブーツを履いている。そして、馬マス…

黄色いビラ

朝出勤すると、製作所の門で男性が黄色いビラを配っていた。それを受け取って、歩きもって読んだ。先週発生した労働災害について書かれていた。俺と同年代の工員が、設備点検中に金型に指を挟まれ、左手の中指・薬指・小指を失ったらしい。俺は、ビラを読ん…

1700文字の海

文章を読んで没頭する。目に見えるものも、耳に聞こえるものも、全てが一度意識の彼方に消えて、文字の羅列と、文章が想起させるイメージが目の前に広がる。ふと、集中が途切れて我に変えると、文章を読む前とは全く違う気分になっている。つまらないことに…

御堂筋バスターズ Ep.1 いい質問ね、斉藤君

コンクリートの地面に反射した朝日が皮膚を焦がし、セミの鳴き声が耳の奥で駆け回った。湿気と熱気が体にまとわりつき、一歩を踏み出すのも億劫だ。兎我野町のラブホテルを出て数分が経った。前頭葉に靄がかかり、思考がはっきりしないまま俺は歩き続け、木…

システムは神じゃない

お気に入りのブログが原発に関するニュースについて書いているのを見る度に嫌になる。決まって語調が重く、文に生気は無い。原発を天から降った厄介のように、自分の力ではどうにもならぬこととして扱う。原発を呪い、唾棄する。 それは違うだろう。原発事故…

ウィスキーがお好きでしょ

一人でウィスキーを飲むようになった。グラスに氷をたくさん入れて、飴色の液体を注ぎ、同量の水を混ぜる。氷を溶かしながらアルコールを薄くのばし、すっかり味をふやけさせた水割りをちびちびとすする。 平生飲んでいた訳ではないので、あまりおいしいとは…

太った

最近、腰まわりの肉が気になる。服を脱ぐと明らかに不要な肉がゼリーのようにふるふると震える。長らく痩せ型スレンダー青年で通していたのに、体躯から始まるおっさん化が着々と進んでいる。 この前、長らく掃いていなかったベージュのコーデュロイ生地のズ…

魔法少女まどか☆どうでしょう

大泉『なまら気味悪いじゃないの藤村君。』 藤村『さっきビルの隙間の結界くぐったでしょう。ここらはもう魔女のテリトリーなんですよ〜。』 鈴井『そこらじゅうにちっこい化け物がいるね。』 藤村『こいつらは使い魔といって、魔女の手下です。』 大泉『藤…

憂鬱な朝

自分の目的地を確認し、そこへ通ずる幾多の線路を思う。全ての線路は細くて頼りない。大きく左や右に道が曲がっていると、それはあらへんやろう、と第六感が口を挟む。 駅から乗り出して線路の行く先を眺めていると、快速列車や特急列車が次々に通過する。そ…

詳細は鼻腔欄に

アレルギー性鼻炎という厄介な持病がある。常に左右どちらかの鼻が詰まっており、発作的に大量の鼻水が出ることもある。小学生くらいの時から発症していたので、随分長い付き合いだ。 いつ何時鼻水が垂れるやもわからないので、ティッシュペーパーは欠かせな…

ただ酔う読書

開高健の『耳の物語』を枕元に置いて、ちびちびと読み進めている。開高健が過去に経験した出来事を音を頼りに追想する自伝的小説で、酩酊と覚醒を繰り返す流れるような文体で開高少年が見た風景や感じたことが描写されている。千日前通り、ジャンジャン横丁…

地震の記憶

9歳のときに阪神大震災を経験して以来、地震でもないのに自分が揺れているような錯覚に陥ることがある。ふとした時に、ゆらりと脳が揺れ、体が平衡を保てなくなる。地震だと思い、体を小さくして神経を研ぎ澄ませる。壁が軋んでいないか耳をすまし、カーテン…

朝目覚めるために毎晩僕は夢を見るのです

毎日途切れなく連続している日々というのは恐ろしい。仕事を終えて家に帰る。風呂に入る。寝る。起きる。髭を剃って歯を磨き、支度をする。仕事に行く。仕事をする。仕事を終えて家に帰る…。 朝と夜が一つの線で結ばれると、自分の尻尾を飲み込む蛇の如く、…