同僚が辞めた

同僚が辞めた。30代半ばの女性で、5年ほど前にうちの会社に入社した。昨年1月に会社を辞めてアメリカに語学留学して、1年ほどで日本に帰国した。上司の推薦があり、出戻りの形でうちの会社に再度入社したのが今年の5月。


昨年まで俺が参加していたプロジェクトの同僚だったので、留学から戻ってきてもう一度うちの会社に入った時、うれしかった。次々と人が辞めて、次々と人が入ってくるコンサルティングファームで、どんな理由であれ、かつての同僚が戻ってくるのはうれしかった。


彼女が上司にもう一度辞めたいと相談したのは今年の7月だったそうだ。つまり、入社して2ヶ月で会社を辞めたいという意思を伝えたらしい。上司が理由を聞き出すと、同業他社に転職したいから辞める、らしい。


『義理』とか『恩義』とか、野暮な概念を持ち出したくはない。でも、100歩譲って、社会人として、人として、一度辞めてもう一度手を差し伸べた人たちに対して、それを無碍にして同業他社に行くというのは、余りにも礼儀に欠ける、と思う。


同僚だって人だ。上司だって人だ。会社だって人なのだ。


コンサルティングファームに在籍していて、やめる理由はたくさんある。だからこそ、こんな会社だからこそ、彼女にはやめない理由を見つけてほしかった。


昨年1月に辞める彼女には盛大な送別会をした。留学に旅立つ同僚に、アメリカ村の居酒屋で陽気に酒を飲んで、カラオケをして、記念写真を撮って、送り出した。


今月いっぱいで辞める彼女には、誰一人として、送別会を開こうという提案をしないだろう。


誰一人として。

寂しさの 正体見たり スーパーで 3個パックの ご飯買うこと (賽野かわら)