自分の芸術と向き合う

「御堂筋バスターズ」という題の小説を書いている。4000字ほどのEp.2を執筆するのに2週間近くかかった。エッセイならすらすらと筆がすすむが、物語は遅々として進まない。


エッセイは自分の感情や知識から形作られる世界観が文章を引っ張る。物語は、自分ではなく登場する主人公、場面、シチュエーションが文章を引っ張る。筆の主軸を完全に物語に預けないと、文章を紡ぎだすことができない。


プロフェッショナル 仕事の流儀」の宮崎駿特集を見たり、「考える人」2010年夏号の村上春樹ロングインタビューを読んだりして、どうすれば創作できるのかを考える。自分の脳みそに釣り糸を足らしてみたり、物語の穴に自分の中にある様々な記憶や、体験したことや、興味をひかれたものなんかを片っ端から放り込んだりしてみる。魚のいない脳が悲鳴を上げ、すっからかんの穴に乾いた風が吹く。


真っ白のキャンバスを前にすると、自分の脳まで真っ白になる。とりあえず、筆に絵の具をつけて、一描きしてみるが、線はかすれて、色はぼんやりとしている。こんなはずではない、と次の紙を捲り、また真っ白のキャンパスに立ち向かう。その繰り返し。


まず、自分の芸術と向き合うリズムを作らなければならない。マラソンのように、同じペースで、自分の中にある芸術を掘り起こし、形にしなければならない。同じリズムで、同じペースで。

粉を挽き 水を加えて 生地を練り 茹で上げた後 ことばを添える