ミックスフライ

メシを食べに行って、メニューに『ミックスフライ』と書かれていたら、ミックスフライを注文したくなる。


ミックスフライの中身は店によって様々だ。エビフライが入っていることは多い。白身魚のフライも同じく。カニクリームコロッケやホタテフライなど、素材が高価なフライが入っていたら、なかなかのフライセレクトだ。


人に指摘されて、自分がミックスフライを頻繁に注文することに気がついた。フライが好きなのと、色んなものが食べられるお得感が好きなのだ。


会社の食堂でもミックスフライが出る。エビや白身魚などのシーフードで統一されている時もあれば、牛・豚・鶏の肉で統一されている時もある。


このあいだ、会社の食堂でミックスフライを注文した。プレートに乗ったフライは三種類。食べ進めると、衣に覆われたフライの全貌が明らかになっていく。一つ目はビーフカツ。二つ目は豚にシソをまいたもの。俺は、またもや肉3連荘のミックスフライだな、と思い、三つ目を一口食べた。一緒に座っていた同僚に


「三個目はチキンカツ。肉尽くしですわ」


などと口走ったのだが、その後、同じくミックスフライを注文していた同僚がフライを食べて、


「いやこれ、明らかに鮭やねんけど」


と、言う。俺は自分の皿に乗っていたかじりかけのフライを見た。断面は見まごうことなくサーモンピンク。フライをもう一口かじる。口の中いっぱいに鮭の香りが広がった。


「そ、そうっすね。これ、チキンじゃなくて、鮭っすよね。ははは」


俺の寒いコメントがテーブルを漂った。


先入観とは怖いものだ。肉、肉と来たら次も肉だと思ったら、だまされた。信じていたのに。


自分が作ったスパゲッティピザを見て浮かない顔をしている弟子に向かって、『俺は料理を頭で食う奴を弟子にした覚えはないで』と言っていたのはミスター味っ子の堺一馬だったが、それを地でやってしまった。


その日から俺は、"馬鹿舌男"、"魚類と鳥類の区別がつかない男"など、不名誉なレッテルを貼られることになった。


このレッテルを払拭するには、"フライソムリエ"にでもなるしかない。

白鮭です。 北海道で 捕獲され 切り身にされて 今はフライです。