バーベキュー

バーベキューといえばサッポロポテトだ。スナックの一枚一枚が親指ほどの大きさで、網状になっていて、触感はやわらかい。"ばーべQ"と冠したフレーバーは、コイヤケのポテトチップスほど味の主張は強くないが、やみつきになる独特のコクがある。小さい頃、スイミングスクールに通っている時に、スクールが始まる前にスーパーで小さい袋のサッポロポテトを買って、待合室で友達と一緒に食べていた。


バーベキューといってスナック菓子を想起する俺とは対照的に、うちの彼女さんは本物のバーベキューの思い出を話してくれる。兵庫県武庫川あたりで、男女の友達が集まり、肉や野菜やお酒を広げて、わいわい語ったと。俺の頭の中は、ちょっと子供で、ちょっと大人の顔をしたオシャレな男女が、陽気なオーラを放ちながら、食べて、話をして、笑いあうイメージでいっぱいになる。タイトルは"リア充"。


大学時代、自由の国アメリカのBarnes&Nobelsのスターバックスに篭って、トールサイズのコーヒーをちびちびと飲みながら学校の宿題ばかりしていた俺には、彼女さんから聞かされる友達とのバーベキューの思い出は眼を覆いたくなるように眩しい。でも、大学生というのは普通は楽しく、輝いているものなのだと思う。自由の国アメリカを謳歌していた大学の同級生はごまんといたのだし。


枡野浩一『淋しいのはお前だけじゃな』(集英社文庫)を読んでいると、枡野さんが、会社の休み時間に大学生の彼女と電話をして、夏休みの話を聞くエッセイがある。添えられているのはこんな短歌だ。

学生のあなたの夏を聞きながら働く日々がわが夏休み


淋しいのはお前だけじゃな

淋しいのはお前だけじゃな


俺も、仕事が終わって風呂に入った後、ベッドの中で彼女さんから電話越しに、武庫川のバーベキューの話を聞く。それが俺のゴーグルファイブ…じゃなくてアフターファイブ。

5年前 入れなかった 裏道の オシャレなカフェに 今夜行こうか