雪の日の安全靴

昨日降った雪が溶けて地面はびちゃびちゃになっていた。ホテルからバス亭まで歩くと、雪は糸がほどけて隙間の開いた革靴に容赦なく進入し、靴下まで到達した。厚手のウールの靴下はシップのようにひんやりと冷たい。


会社に着いた後、濡れてしまった靴を脱いで、工場用の安全靴に履き替えた。つま先に厚い鉄板が入っているので、風も通さない。足に調度フィットして、革靴よりも暖かい。水色のスニーカー調なのでスーツ姿には似合わないが、背に腹は変えられない。


安全靴を履いて、売店にパンを買いに行く。革靴だと雪まじりの水滴でつるつるとすべる床も、靴の裏のすべり留めがしっかり効いていて、ふんばりが効く。雪の進入も無い。歩くスピードが若干速くなる。


売店で買ったパンを食べた後、仕事関係の本を読んでいると、眠気で頭がぼんやりとする。昨晩、うまく眠れなかったのだ。空を眺めると、白んで見えるほどに明るい水色で、ちぎれた小さな雲が遠くの山にかかっているのが見える。風は冷たいが、安全靴と股引で完全防備しているため、寒さもさほど感じない。


いろんな気分が入り混じって、穏やかな朝が作られる。空気の無い宇宙空間を、ハイテク宇宙服を着て漂い、ヘルメット越しに青い地球を眺める、そんな気分。

眠らずに 迎える朝の 賑わいを まぶたを閉じて やり過ごすなり