ドンキホーテ

父方の祖父の妹の旦那はドンキホーテをモチーフに画業に励んだ画家だった。グーグルで名前を検索してもwikipediaはおろか、彼を扱った資料は全く出てこない。記念館を建てる計画があったらしいが、遺作を管理していた妻である祖父の妹が他界したことで、中止となった。


祖父の家には彼の絵が200枚ほど残っている。祖父の妹が、株取引につっこむ金を貸して欲しい、との借金の申し出に来た時に形として預かったらしい。祖父はこの絵をオークションで売って一財産築くことを人生最後の事業としているが、近年取引の無い無名の画家の絵がそうそう売れるとは思えない。


体の自由がきかない自分に代わって絵を売る伝手を探してほしい、と祖父から依頼を受けているので、先日大阪タカシマヤの美術画廊に足を運んだ。店員に美術の査定について尋ねると、そういったサービスは行っていないとのこと。絵画取引について知識が微塵も無いので、勝手がわからない。色々調べなきゃいかん。


祖父の妹の旦那がなぜドンキホーテをモチーフにして絵を描いたのかはわからない。彼は第二次大戦で片腕を負傷し、同じく片腕を戦争で負傷した著者セルバンテスに深く共感したのではないか、と俺は勝手に想像しているが、定かでは無い。


まあしかし、ドンキホーテと聞くと文学ではなく大量の棚と商品で埋め尽くされた雑貨屋を思い出す。ノリタケと聞くと食器ではなくお笑い芸人を思い出す。そんな自分の残念っぷりが、嫌になる。でも、堕落した中産階級の家には絵画も高級食器も要らないのである。

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