一週間

もうずっと、井上ひさしの一週間を読んでいる。枕元において寝る前に読んでいるのだが、まだ150ページを過ぎたあたりだ。物語の中の時間では、主人公小松修吉が酒井という共産主義活動家と酒を酌み交わした後、寝床についた月曜日の夜まで進んだ。あと火〜日曜日まで6日間もある。先は長い。


物語の舞台は、終戦間もないシベリアの日本人収容所。帯には小松が入江という元軍医からレーニンが書いた『裏切りと革命の堕落を明らかにする爆弾のような手紙』を受け取るらしいのだが、入江なる元軍医もレーニンも出てこない。収容所での関東軍将校によるいじめの話、赤旗勲章を授与された地質学者とその妻の話、主人公の共産主義活動家時代の話等が出てきた。


小松は満州で映画会社で働いていた、とある。俺の祖母も昔満州に居たそうだ。終戦後、命からがら日本に引き上げてきたと言っていた。道すがら、日本人だと分かるとひどい目にあうので支那語をしゃべり、支那人のフリをしたそうだ。



祖母も最近認知症が進んできた。大昔の思い出を昨日のことのように話す。悲壮感だけの話だったら気がめいるが、根が明るい性格なので、あっけらかんと戦時中の話をする。


『機銃掃射なんて、戦闘機が来るほうに来るほうに逃げたら、あんなもんあたらんわ』


と、話しているのを聞くと、この人はボケてもこのまま長生きしはるやろな、と思う。


【今日の短歌】
寒い夜 『おいしい緑茶』を入れるには 小さすぎるわ ホテルの茶碗