月は無慈悲な夜の女王

祝日出勤である。通勤のバスに乗って、うつらうつらと景色を眺めていたら、瞬く間に途中のバス亭を通過して、勤務先に着いてしまった。車も人も普段の半分もいない。工場の門に立つと部品を搬入するトラックが列を成していた。


客先の工場は24時間稼動している。工員が3交代で作業にあたり、昼夜を問わず部品を生産している。夜中になっても、リフトが軽快に走る音が工場に響き渡り、休憩する工員達のタバコの火が蛍のようにぼんやりと光る。


工場が良く動いているということは、景気が良いということだ。


リーマンショックを受けて冷え込んだ自動車需要は回復に向かっている。補助金打ち切りで頭打ちになった国内需要に代わって、アジア圏新興国での需要が市場にガソリンを注ぐ。2008年から夜間稼動を見合わせていた工場も、稼働率を上げて昨今の需要回復に対応している。客先の工場も、期間工を増やして生産体制を整えているようである。


需要が拡大し、供給側もそれに合わせて生産設備を整える。稼動率を上げる。24時間生産する。拡大する企業を工員や間接部員が歯車となって支える。


工場の設備は保全を行うことで24時間稼動するためのメンテナンスができるかもしれないが、働く人のメンテナンスは難しい。世間様が夜中眠りについて、休日を過ごしている時に、現場で働く工員はやりきれない想いで作業している。


日夜働く工員の方々には申し訳ないが、自分の状況を鑑み、夜勤の無い職種で良かったな、とつくつぐ思う。ま、客に合わせて、今日も出勤してるけどな。こんな文章書いたりしてさぼってるけどな。


京都嵐山では紅葉が最盛期を迎えているらしい。俺が見に行けるのは今週末の日曜日になりそうなので、それまで落ちずに色づいていてくれれば良いのに、と淡い期待を胸に、今日も会社支給のlenovoのPCと睨めっこしている、そんな勤労感謝の日


【今日の短歌】
コンビニで 夕飯を買う リーマンが 気にしているのは カロリーばかり