高速シューカッター

シルシルミシルという番組を見た。一つのテーマについてVTRで紹介する情報番組だ。製造工程や生産設備の紹介など、工場見学を受けているみたいで結構おもしろい。


前回の特集はセブンイレブンだった。お弁当を全て手作業でもりつけるパートおばちゃん部隊や、何十人前のチャーハンを一度に炒める巨大鍋など、いつも行くコンビニで見かける品物がこんな風に製造されていたのかと思うと、非常に興味深い。


一番おもしろかったのはスイーツ売り上げナンバー1の『こだわりクリームの極上シュー』の製造工程だった。小麦粉、卵、牛乳などを混ぜ合わせ、細長い通路のようなオーブンの中でゆっくり焼き上げて、シュー生地を作る。出来上がったシュー生地の中にクリームを挟むために、これを横半分に切る。


番組では、『さて、出来上がった生地をどうやって二つに切るのでしょうか』ともったいをつけて、クイズ風にいったん間を置いたあと、設備を紹介した。その名も高速カッター。シュー生地を運ぶベルトの上に覆いかぶさるように機械が設置されており、その中に高速に回転するカッターが装備されている。担当の人が違う工程から運ばれてきたシュー生地をこのカッターの中に放り込む。


この工程が非常にシュールなのだ。


担当の人はシュー生地を1〜2秒に1個づつカッターに放り込む。高速回転するカッターによって半分に切られたシュー生地は、切られた勢いでばらばらの方向に飛んでいく。投入される数量は1つずつで、切られた後もばらばらにベルトに飛んでいくので、ベルト上は非常に少ない密度でシュー生地が並んでいる。そのベルトの上に1〜2秒の感覚でシュー生地が二つに切れて飛んでくる。乱れるように。1つまた1つと。俺はもう、シュー生地1つ1つが人の頭のように見えて仕方がなかった。


とても甘くて素敵なセブンイレブン屈指のスイーツを紹介しているのに、その製造工程は余りに殺伐としている。この殺伐としたカッティング工程をこれでもかというくらいさまざまな角度でカメラが捕らえる。機械を上から見たショット。横から見たショット。正面から捕らえた、生地がこちらへ向かって飛んでくるようなショット。特に驚きもなく、スタジオのタレントがすっかり冷え切った表情になっているにもかかわらず、シュー生地が切られては飛んでいく。


これは何かの製造工程に似ている。えっと……あ、そうそう、リカちゃんを作るときに、つるつるのスキンヘッドの人形にミシンで一本一本髪の毛を植えつけていく工程に。


【今日の短歌】

もういいわ バニラの香る その口と 舌を使って 裸にしてよ