人によってデザインされたもの

通勤途中のバスの車窓から街を眺めていると、たくさんの電柱が目に留まった。普段気にも留めないようなことだが、電柱には人がのぼるために使用するはしごのような足場がついている。調べてみるとはしごのような足場は足場ボルト(ステップボルト)というらしい。ステップボルトで検索したら、藤井電工という企業のHPがヒットして、柱上作業用安全帯という工事の時に作業者が体に装着するベルトの使用方法が書かれた記事がヒットした。


流れる情報の表面をなぞるような視点から、一つの対象に対して深く入り込むような視点に切り替えると、俺が働くこんなへんぴな街(失礼)でも、会社だったり個人が苦心して考えてデザインしたモノが溢れているんだなぁと思う。


例えば商品が100円均一の自動販売機に書かれているハンマーを持っている少年の絵(値段が安い、ハンマープライスという意味だろう)が目にはいる。少年の絵を書いたのはどこかのデザイン事務所の社員さんなのか。それとも自動販売機を所有している会社の絵のうまい事務さんだったりするのか。デフォルメされた少年の体や顔は3〜4頭身で漫画・アニメ風だ。


漫画家さんのインタビューか何かで、映画はどこかでロケをすれば、既にそこにあるものを撮ることができるけれど、漫画の場合はそこにあるべきものは全て描かないといけない、それが大変です、と言っていた。映画の中で映像として我々の目に飛び込んでくる既にそこにあるものは、どこかのダレかがその場所にこういう大きさでこういう形で設置しようという意図や目的で存在している。地面から勝手に草のように生えてきたわけではない。漫画の場合は、背景、キャラクターの衣服、小物といったあらゆるそこにあるべきものをデザイン(写真を使ったりもするのだろうが)しなければならない。途方もない作業だ。


深く入り込むような視点から流れる情報の表面をなぞるような視点に切り替える。信号が変わってバスが動き始める。幅の狭い川にかかった橋を渡ると、俺が降りるバス停が見てきた。


床に置いていた鞄を手に取り、ドアに向かうと、バス停から乗ってくる初老のおばさんが見えた。おばさんは腕にイブサンローランのトートバッグをかけていて、鞄の紐にはソフトバンクのお父さんのストラップをつけていた。首に赤い首輪をした瞳がつぶら北大路欣也が声をしている北海道犬の、


それ、俺もほしいわ。


【今日の短歌】
カフェオレは 得意なんです ブレンディー 妻の実家が ブラジル人で